
| 1 「やめっ……ぐえっ……もう、勘弁……してくれっ……」 「俺たちが悪かった。」 ローファーの下で男がうめいた。 地べたに這った男が頭をかすかにあげて謝った。 「二度とでけぇ口叩くなよ!」 俺がタンカきると、男たちは何度も忙しなく頭を上下させた。 「今日から俺が、K学の頭だ。」 唾を吐き捨てた。 へっ、笑えんな。学コシキってんの、あんなナンパやろーどもなんて。 鼻で笑ってやる。 「坡。楽勝だな。」 親友の轍生の言葉。 「あったりめーよ。」 俺、澪月 坡。 今年、こいつ――幼馴染の得道 轍生。 と、神奈川県鎌倉市にある、私立K学園中等部に入学した。 入学して1カ月もしないうち。 中等部アタマって奴が、舎弟をぞろぞろと連れてきやがった。 俺の長い赤髪を引っ張り、毒づいた。 「K学に来たやつは、皆、凄御さんに従うんだよ。」 舎弟共の真ん中に、黄色い髪をデコ分けしたニヤけた顔。 いかにもナンパ野郎。 俺はその顔に唾を吐き捨てた。 「何だ、コノヤロウ!!ぶっ殺されてーのかっ!!」 「やったろーじゃねーか。俺が負けたらてめーの舎弟になってやらあ!。」 売られたケンカ。もちろん買ってやる。 「おれが勝ったら、K学はシメさせてもらうぜ。」 ――って、ワケで、タイトルマッチが始まった。 結果? 結果はさっき聞いた通り。 「わるかった……」 「一年だからってナメんじゃねーぞ。」 相変わらず這いつくばってる凄御は、どす黒い血の付いた唇を噛みしめた。 ケンカには自信があった。2コ上だろうが、身長差があろうが、関係ない。 「すげーじゃんか。K学のアタマ!!」 轍生はすでに170センチ以上あった。 それでも162の俺のことを強いって認めてくれてた。 ずっと幼いころからの付き合い。腐れ縁ってやつだ。 K学はエスカレーターだから、この先、高校まで一緒だ。 ってな事で、入学1カ月で俺はK学のタイトルを奪ったってわけだ。 「この調子で高等部もいくかあ!」 「いーね!」 強いものが弱い者の上に立つ。あたりまえのこと。 弱い奴あ、強い奴に従ってりゃいんだよ。 俺は我物顔で、肩に風をきって歩いてた――……。 >>次へ <物語のTOPへ> |